時間を漬ける

 漬物をつくることも、食べることも、そして最初は恥ずかしかった「伝えること」も、最近は好きになりました。長年おなじことをしながら、いまでも、漬けあがった野菜をぬか床から取り出すときの感触や色、そしてお味見のひとくちに変わらず心ときめかせています。

 学生時代から読みつないできた詩集のひとつに「食卓一期一会」があります。6年前に著者の長田弘さんと何度かお話する機会があり、静かな語り口とやわらかな笑顔が印象的な方でした。週末に畑で間引きした小さな大根を漬けながら、今朝ふと詩の最後の四行を想い出しました。


急いではいけない

ぬかみそを漬けるとわかる

毎日がゆっくりとちがってみえる

手がはっきりとみえる

長田弘「ぬかみその漬けかた」 抄


春野菜はぬか漬物との相性がよく…春人参、春キャベツはもちろんのこと

もうすぐ畑に登場する、アスパラやラディッシュも、おいしい漬物に育ちます。